老後に後悔しない為のキャリア選択
- はじめに
- こんな人にオススメ
- キャリア選びってどのくらい大事なの?
- 視野狭窄のパターン
- どうして人間の脳はキャリア選択を間違えてしまう様にできているのか?
- バイアスに関する面白いクイズ
- バグの数は170種類以上
はじめに
世の中には、様々な職業や会社があり「どこを選べは良いのか?」や「何を仕事にするべきが?」など悩みが尽きないものです。入ったは良いものの「思っていたのと違う」なんて事もあり得ます。
そして、巷では様々なアドバイスがあります。好きな事で成功した人は「好きを仕事に」と言いますし、投資で成功した人は投資を積極的に勧めますし、公務員の様な安定職の人は公務員をオススメしますが、これらはほとんどが個人の経験や嗜好に基づいて言っているという点があります。
こんな人にオススメ
- 就活でどのジャンルにするか迷っている人
- 転職を考えている人 など
キャリア選びってどのくらい大事なの?
キャリア選択をする上で失敗してしまうと私たちは年老いた時に後悔する事が分かっています。
2012年にコーネル大学が1500人の老人に「人生で最も後悔した事は?」と尋ねたところ、1番多かったのはキャリア選択への未練の言葉でした。
世界中で類似の研究が行われており、大体どの地域でも似た様な結果が出ています。特に日本では、「仕事を第一にしすぎた」や「働きすぎてプライベートを無くした」といった答えを返す老人が多かったのです。
また、厚生労働省が36万5千人を対象にした調査では、入社から3年以内に離職した人の割合は大卒でも約3割越え。さらに悪いことに離職動機のトップが「思っていた仕事と実際の内容が違う」だったのです。
欧米やアジア圏での約2万件の調査によれば、ヘッドハンティングによって会社の管理職や総合職に転じた採用者のうち約4割は1年半以内にクビになるか、自分の適応性の無さに気づいて自らポストを辞していました。
どうして人はこれほどまでにキャリア選択を失敗してしまうのか?
ハーバードビジネススクールが行った調査によれば、日本を含む世界40ヵ国のヘッドハンターや人事部門の責任者1000人越えにインタビューを行い、過去に携わった転職の実例をピックアップした上で、働く場所を変えた事により以前と同じパフォーマンスを発揮できなくなったり、人生の満足度が下がってしまったりした人、つまり、良い仕事を見つけられずに後悔して人達の共通項を調べました。
結論を言うと、就職と転職の失敗はおよそ7割が「視野狭窄」によって引き起こされてしまうと言う事です。
※視野狭窄・・・物事の一面にしか注目できなくなり、その他の可能性を全く考えられない状態を意味する。
この調査の中で1番多かった失敗は「下調べをしっかりしなかった」というものでした。
視野狭窄のパターン
この「視野狭窄」は誰にでも起こり得る物で、どういったパターンがあるかをハーバードの研究チームは述べています。
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お金に釣られる
給料アップに惹かれて転職を決めて、それだけしか考えられなくなるケース。収入が増えるのは良いが、前職で培ったコネを失うパターンがよく見られる。
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「逃げ」で職を決める
現在の仕事に不満が募り、「将来の為に」では無く逃避で職を転々とするケース。今の会社を改善する可能性には思いが至らない為、最終的に収入も下がる事が多くなる。
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自信がありすぎる、またはなさすぎる
自己評価がやたら高いせいで「私はどの会社でもやっていける」や「今の会社には問題がある」などと断定しまい、実は自分の方に問題がある可能性や現状のありがたみに思いが行かないケース。または、逆に自信がなすぎるせいで、「あんな会社は自分に向かない」と決め付けて、より良い可能性から自らを遠ざけるケースも定番。
先ほども言った通り、どれだけ頭の良い人でも「視野狭窄」を避ける事はできません。
オハイオ州立大学が一流企業で働くCEOやCOOを調べた研究では、彼らが行った様々な研究168件ほど集め、「新たなビジネスモデルを採用すべきかどうか?」や他の企業から優秀な人材を引き抜くか?」といった意思決定が成功に終わったかどうかを調べました。
その結果は、意思決定の際に3つ以上の選択肢を吟味したビジネスパーソンは29%だけで、たいていは「優秀な人材を引き抜くか引き抜かないか」や「新たなデザインを採用するか採用しないか」といった2択でしか物事を考えていなかったのです。
データによると、2択で意思決定を下した際の失敗率は52%なのに対し、3つ以上の用意した際の失敗率は32%までに下がっています。
どうして人間の脳はキャリア選択を間違えてしまう様にできているのか?
それには2つの理由があります。
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人間の脳には、職業を選ぶための「プログラム」が備わっていない
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人間の脳には、適職選びを間違った方向に導く「バグ」が存在している
①人間の脳には、職業を選ぶための「プログラム」が備わっていない
そもそもなぜ私たちの脳はこれを備えていないかというと、「職業選び」とは、現代になってから浮かび上がってきた問題だからです。歴史を遡れば分かる様に、生まれた時から農民の子供に生まれたら農民だし、漁師の子供に生まれれば漁師でした。
能力主義の考え方が進んだのは19世紀のヨーロッパで、人類の歴史の9割以上が「職業選択」に悩まずに暮らしていました。その為、人間の脳には「複数に分岐した未来の可能性」をうまく処理するための能力が進化しませんでした。
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つまり、私たちの脳はこの様な現代的な悩みに適応していない為に、大量の選択肢を前にした人の多くは不安や混乱の感情に襲われます。
選択のパラドックスとは
この現象は心理学で言うとこの所謂「選択のパラドックス」の現象です。
これは、心理学や行動経済学では有名な話なのですが、選択肢が増えると幸せになるような感覚があると思います。しかし、人間は選択肢が増えてしまうと不幸になるという事が解明されています。
選択肢が増えると、迷って思い悩む時間が増えます。更に、迷って思い悩んでから1個選んだらどうなるかというと、選ばなかった選択肢をやはりどこかで後悔してしまいます。ずっと後悔し続ける訳ではないのですが、他を選んでいたらどうなっていたかなと考える時間が少なからずできてしまいます。
このように、選択肢が多いと選ぶまでに悩み、選んでから後悔する時間が選択肢の数に比例して長くなってしまいます。
人間には大体3択~5択の選択肢が適正となっていて、それ以上を超えると選べなくなり、選ぶのに凄くストレスを感じてしまいます。
では、不幸にならないためにどうすれば良いかと言うと、選択の基準を持つ事をオススメしています。
選択肢を瞬時に3択~5択に絞れるくらいの自分の中での基準を作る事が大事になります。
例えば、「迷ったら最初に気になった方を選ぶ」みたいな感じです。
②人間の脳には、適職選びを間違った方向に導く「バグ」が存在している
もう1つの問題が人間に備わったバグの存在です。
誰の頭の中にも大量のバグが生まれつき住みついており、そのせいで私たちは人生の重要な選択を高い確率で間違えてしまうことが分かっています。
人間の脳には生得的なエラーが存在し、大事な場面でいつも同じ様なミスを繰り返す様にできているのです。
バグをいくつか紹介しましょう。
- 何かを決める際に、手軽で新しい情報だけに頼ってしまうのは、人間が持つ定番のバグの1つで、人の脳には難しい決断をできるだけ避けようとする心理傾向が備わっており、心理学では「利用可能性ヒューリスティック」と言います。
- 現状を変えたいにも関わらず「今のままでいたい」 と思い現状を維持する事を心理学で「現状維持バイアス」と言います。
- 多くの人が目標や夢が叶ったあとの感情を高く見積りすぎて、結果として大きな落胆を味わう事を心理学で「インパクト・バイアス」と言います。
この様なバグの事を行動経済学で「バイアス」と呼びます。
バイアスに関する面白いクイズ
バイアスの例として、面白いクイズがあるので挑戦してみて下さい。
「ある父子が自動車事故に遭ってしまい、父は近所の病院に送られ、息子は別の病院に送られました。幸いにも、その病院には天才と名高い院長がおり、その院長が直々に息子を処置してくれる事になりました。
しかし、病室に運ばれてきた息子を見て、院長は即座に言いました。『私には彼を手術することができません。彼は私の息子なので失敗が怖いのです。』どう言うことでしょうか?」
果たして、事故にあった父親が母親の再婚相手だったのか?それともまた別の事情があるのか?
さぁ、皆さんは答えが分かりましたか?
あまり長いこと考えても面白くないので1分以内で考えて答えを出してみて下さい。
この研究は心理学の研究で実際に使われるもので、どんなに知性が高いグループでも、即座に正解できる人は2割もいません。
バグの数は170種類以上
この様に人間にはバイアスが元々備わっており、そのバイアスにも様々な種類が存在しています。現時点でその数なんと170種類以上❗️
それぞれのバイアスには 意思決定を誤らせるもの、記憶を歪めるもの、人間関係を乱すものなどがあり、あらゆる方向から私たちを間違った道に誘い込みます。
適職探しにもその悪影響は存在し、代表的なのが「確証バイアス」です。
これは、自分が一旦信じた事を裏付けてくれそうな情報ばかり集めてしまう心理で、これはカルト宗教の発生のメカニズムと同じです。
「副業に力を入れて自由な働き方をするのが良い」と思い込むと、副業で成功した人の情報ばかり集め、副業をしている人たちとばかり集まる様になります。
仕事選びのバイアス
ここで仕事選びの邪魔になりそうなバイアスを簡単に説明してみましょう。
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アンカリング効果
選択肢の提示され方によって、全く異なる決定をしてしまう心理現象の事。例えば、あなたが転職先を選ぶ最初の段階で「年収500万」の企業に惹かれた場合、それが基準になってしまい、頭では「お金は重要ではない」と分かっていても、どうしてもそれ以下の年収では物足りなくなってしまいます。
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真実性の錯覚
繰り返し目にしただけで、その情報を「真実に違いない」と感じる心理の事。 ニュースサイトなどで「これからの働き方は従来のルールでは通じない」や「今後は個人の能力が問われる時代だ」といった文言に何度も触れたせいで、そこに数字やデータの裏付けがなくとも事実だと思い込んでしまいます。
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フォーカシング効果
職探しにおいてあなたが重要視するポイントが、実際よりも影響力が大きい様に感じられてしまう状態の事。「GoogleやFacebookの様に社員食堂が充実していたら最高だろう」と思っていれば社員食堂がもたらす喜びが必要以上に大きく見えますし、「福利厚生だけは譲れない」と考えていれば福利厚生を重んじる会社が実態よりよく感じられてしまいます。
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サンクコスト
今までたくさんの時間とお金を使ってきたからという理由で、メリットがない選択に拘り続けてしまう状態の事。入社当初から8年間2時間かけて通勤し続けていたら、会社の近くに住んだ方がメリットが大きいのに電車通いを選んでしまうのです。
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感情バイアス
自分の考えが間違っているという確かな証拠があっても、ポジティブな感情を引き出してくれる情報に飛びついてしまう心理傾向の事。厳しい事実を受け入れるのは誰でも嫌な物ですが、ネガティブな感情を避けたいあまりに「好きを仕事にしよう!」や「10年後の有望な企業はこれだ!」といった手軽な情報にばかり意識が向かってしまう現象は誰にでも覚えがあるでしょう。
適切な職業選択に関する内容を引き続き載せて行きます。
では、また👋